個人法務

「業務委託」は偽装かも?泣き寝入りしないための労働法【弁護士が解説】

「業務委託契約だから、残業代や有給休暇がなくても仕方ない。」
「フリーランスとして、クライアントの指示には絶対に従わなければ。」

そう思い込み、会社員と同じように働きながら、正当な権利を諦めていませんか?

もし、あなたが結んだ契約書の名称にかかわらず、その働き方の「実態」が会社の指揮命令下にあるのであれば、それは労働法を逃れるための「偽装フリーランス(偽装委託)」かもしれません。

法律は、契約書の形式的な文言よりも、あなたのリアルな働き方を重視します。この記事では、ご自身の働き方に疑問を持つすべての方へ、泣き寝入りせずにご自身の権利を守るための法律知識を、分かりやすく解説します。

法律上の「労働者」と認められれば、あなたは労働基準法などの法律で手厚く保護されます。たとえ契約書に「業務委託」と書かれていても、例えば以下の権利を主張できる可能性があります。

  • :法律で定められた労働時間を超えて働いた分について、割増賃金を請求できます。

  • :心身をリフレッシュするために、給料を受け取りながら休暇を取得する権利が生まれます。

  • :「明日から来なくていい」といった理不尽な雇い止めは、「不当解雇」として無効になる可能性があります。

  • :会社の費用負担で、健康保険や厚生年金、万が一の失業に備える雇用保険に加入できます。

この原則は、様々な職種に当てはまるものです。実際に、芸能人(アイドル、タレント等)やキャバクラで働くホステスといったケースでも、裁判所がその働き方の実態をみて「労働者」であると認めた裁判例は存在します。あなたの働き方が法律の保護を受けられるものか、一度立ち止まって考えてみませんか?

法律の世界では、一般に「使用従属性(しようじゅうぞくせい)」があるかどうかで、あなたが労働者かどうかを判断します。これは簡単に言えば、「会社の指揮監督のもとで働いているか」ということです。

この使用従属性は、以下のチェックリストにあるような様々な要素を、裁判所が総合的に見て判断します。

ご自身の働き方が、以下の項目にどれだけ当てはまるか確認してみましょう。当てはまる項目が多いほど、あなたは「労働者」と判断される可能性が高まります。


  • 契約書に「断れる」と書いてあっても、「一度断ったら次の仕事がもらえない」といったプレッシャーや経済的な状況から、実質的に断れない状況にある場合は、諾否の自由が否定され、労働者性が肯定される可能性があります。


  • 業務マニュアルや日々の指示によって、仕事の進め方を具体的に管理されていませんか? 自分の専門的な裁量で決められる部分がほとんどない場合、指揮監督を受けていると評価されやすくなります。


  • 「朝9時から夕方6時までオフィスで作業」のように、勤務する時間や場所を会社から厳しく指定されている場合、労働者としての性格が強まります。


  • 「時給〇〇円」「月給〇〇万円」のように、仕事の成果物(納品物)ではなく、働いた「時間」に対して報酬が支払われている実態があれば、それは労働の対価としての「賃金」と見なされやすくなります。


  • あなたが病気や私用で休む際に、自分で代わりの人を探して業務を任せることが許されていますか?「あなたでなければダメだ」とされ、代わりを立てることが認められない場合、労働者性は強まります。

「でも、業務委託契約書に自分の意思でサインしてしまったし…」と不安に思うかもしれません。しかし、ご安心ください。

裁判所は、当事者間の形式的な合意(契約書の形式的な文言)よりも、上記のような客観的な働き方の実態を重視します。いくら契約書で「対等なパートナーシップ」と謳っていても、実態が伴っていなければ、その契約条項は労働法を潜り脱けるための「偽装」と判断され、労働者として保護される可能性があるのです。

もし、あなたが現在の働き方に少しでも疑問を感じ、「自分の権利が守られていないかもしれない」と思ったなら、それは決して考えすぎではありません。一人で抱え込まず、まずは弁護士に相談することをお勧めします。